真人間を目指すためのログ

その日したこと、観たもの、読んだもの等の記録

(2020/01/08)

映画はそう面白いのに当たらないので飽きてきたし、創作は行き詰るしでどうにもならんと思いふとamazonからkindle版の『わたしを離さないで』のサンプルをダウンロードしてみたら衝撃だった。実に面白いのである。この小説は前に途中まで読んで止めてしまってその後映画を見たために謎の設定の部分や物語がどうなるかに関して知っているのだが、実は先にネタバレを把握した方が内容に集中しやすくてよいのではと感じた。ネタバレを読んでおいたほうが物語は楽しめるなんて研究もあるらしく、確かにと思ったが、しかしそれはすべての作品にあてはまるわけではないのではないかというのが難しいところだ。というのは映画『セブン』をネタバレされていたとしたらやはり衝撃は薄くなっていただろうし、『エクス・マキナ』でも同様だろう。なのでネタバレしないほうがよい作品というのはその作品の展開が鑑賞者のなかでサプライズとして機能し最高評価を得られる場合、そうでない場合は先にネタバレを読んでいた方が物語に集中して楽しむことができ最終的な満足値は上がるのではないかと思った。私の場合映画でも物語展開がどうなるのか知っていないと内容を把握しようとしても頭が回らずイライラして集中できなくなってしまうということが多く、『運命じゃない人』『アフタースクール』とかいくつかの作品は途中で視聴を止めようかと思ったがネタバレあらすじを読んでから再度見たら今度は内容に集中できたなんてこともある。そんなこともあってあらすじを先に予習しておくのはそう悪いことではないのだろう。
あともう一つの衝撃は電子書籍の方が紙の本よりも集中して読めると知ったことである。私はKindle Paperwhiteでフォントのサイズを5に設定しているのだがこうするとだいたい購入した電子書籍のフォーマットでは1ページが12~13行として表示されることになり、その場合視界に見える文字の量は紙の本よりもずっと少ないのである。紙の本は見開きで常に2ページを開いているが、電子書籍の場合見えているのは1ページなのである。これは何を意味するかというと読もうとする個所以外にもそのとき読んでいない文字が視界に入ることとなり、つまり紙の本のほうが表示される文字の範囲が広く、だが電子書籍での文字の見える範囲が限られていたほうが内容に集中できるのではないかということだった。私は2011年の東日本大震災直後の日には情報を得ようとガラケー2chを読んでいたりなんかしたのだが、表示範囲の狭いガラケーで読むほうがパソコンのモニタで読むよりも流し読みをせずにずっと一つ一つのレス内容を確認するように読んでいたのである。光文社古典新訳文庫の『トムソーヤーの冒険』が家にあってまだ読んでいないので電子書籍版と比べてみようとサンプルをダウンロードしたが確かに電子書籍のほうがずっと読みやすく集中できて面白く読めたのである。そんなことで私には紙よりも電子書籍の方が実は有利だったと知りこれは衝撃である。というのは私は以前アンチ電子書籍派でその理由というのが巷でよく言われる紙とインクのにおいがいいとかそんなことではなくて紙の本の方がはるかに集中して読める電子書籍は全然内容が頭に入らなくてだめだと思っていたからである。しかし違った、他にもトーマス・マンの『魔の山』のサンプルを落としてみたらやっぱりこれが面白いのである!衝撃だ。といっても何でもかんでも読めない本が読めるようになるわけではなくやはりニューロマンサーなどSFやミステリ小説とか失われた時を求めてなど苦手なものは苦手で読めないままだった。当たり前だが。しかしいくつかの挫折本が電子書籍で読めるとしたらその恩恵は大きい。哲学本なんかも実は電子書籍なら読めるものがあるかもしれない。しかし紙の本にだけあるアウラというものは確かにあって電子書籍にはそれがなくフラットなのであるが、だが紙の本にそれぞれそなわっているその個性がその本にすんなりと入るのを邪魔している面があるかもしれないのである、電子書籍ではどんな本でもフォントは同じだしフォーマットの違いはとても少ないので、個々の紙の本の個性に対してこちらから意識を合わせようとする努力は不要になる。もしかしたら個々のフォーマットの違いを取り去ったほうが書物の内容に対し本質を感受できるかもしれないのだ。しかしこんなところでも世界のスーパーフラット化はすすんでいるのだった。もちろんここに書いたことは個人的なことで多くの人が紙でなく電子書籍にする理由が本のスペースの問題なのだろうが今まで読もうと挑戦しても途中で止めてしまった本が読めるようになるかもしれないという衝撃は大きかった。なので出版社各社はこれからは大いに電子書籍化を進めてほしいところである。Amazonの読み放題サービス のKindle Unlimitedであるがこれは月額980円で対象書籍は読み放題というものだがあまり入らない方がいいかもしれない、というのは入ってしまうと対象の書籍ばかりを探して読むようになってしまうということがあるからで以前暇なときに入ってみたのだが。しかし光文社古典新訳文庫が対象になっているのはありがたいので読みたい本があるときにその都度入ったり解約したりするのがいいのかもしれない。